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数学における図書館の役割って?

書誌データベース構築法という本を読みました。
1991年に出版されたものでIT関連本としては相当古いものと言えるのでしょうが、具体的なシステムとか現状とかではなく基本的な枠組みを中心的に扱う本なので、時代を越えて十分読むに堪えるものだと思います。
主な内容としては
・データ項目の選定(第4章:一つの文献に対してどのような情報を抽出するか:タイトル、著者などや分野とかキーワード、概要を付すか否か、付すとすればどの程度のものとするか、など。)
・主題分析(第6章:平たく言うとタグ付け。文献の内容を表すキーワードをどのように見つけるかという話)
・第三者抄録(第7章:抄録(しょうろく)とはabstractのことです。「第三者」とは著者以外の人物によるもの、という意味。)
・シソーラス作成(第8章)
・スケジューリング、全体の統括(第2、9,10章)
・外的要因(第11章:周辺的利用者や著作権法、既存の他のデータベースとの連携など)
といったところでしょうか。
データベースの作成・維持って個人レベルではとてもできないですし、本の内容を「手を動かしながら理解する」ことは現実的じゃなくて、座学で終わっちゃう私としてはことの壮大さに圧倒されっぱなしでしたが、とてもおもしろかったです。
レコード、シソーラス、ディスクリプタ、特定的、論理的などなど、専門用語が初っ端から連発されて、結構ハードルが高い本かと最初は思いましたが、読み進めるとほとんどの定義は書いてあるので、くじけずに読み進めれば最終的にはすっきりといろんなことが整理できるのではないかと思います。(さんざん議論して50ページ後に定義があるなんて、数学ではありえない! 分野によって読み進める際の頭の使い方も覚悟の持ち方も違いますね。)

普段から思うことなのですが、数学における図書館の役割ってどうあるべきなのですかね。
(数学に限らず理論自然科学系で共通のことですが)個々の文献の大まかな理解をするハードルがまず高すぎるために、数学者同士の間でしか情報交換ができてないのが現状で、リファレンスサービスなんかはまるで機能してないように感じます。専門資料論の本なんかでも、自然科学分野での文献の見つけ方は同業者の間の交流が主要な情報源である、的なことが書いてあるくらいです。(ちょっと古いのと、この本の分筆者独特の主張なのか一般的な考え方なのかはわかりませんが、実感として正しい気がします。)
購入図書の選定、主題分析などは司書さんの仕事としてまだまだ必要でしょうし、そういう方面なのでしょうかね。著者が書いたabstractとは別に、著者と読者の橋渡しのための第三者抄録というのもあればいいのかもしれませんが、数学がよほどわからないと書けないのが現実でしょうし、文献の数が人文系と比べれば膨大ではないので、図書館側が作らなくても何とかなっているような気がします(ほんとう?)。いいものがあれば研究のレベルが飛躍的に上がるのかもしれないですが、寡聞にして事例を知らないのでさっぱりわかりません。

引用文献
上田修一・三輪眞木子:書誌データベース構築法、丸善株式会社、1991年
戸田 光昭(編)、金容媛・澤井清・玉手 匡子・仁上幸治(著):新・図書館学シリーズ8 改訂 専門資料論、樹村房、2002年


蛇足:
109ページに(第三者)抄録作成の一般的注意事項として次のようなリストがありました。以下に引用します。
①抄録の内容
1)著者が読者に伝えたい内容を重点的に取り上げる。
2)読者が関心を持つであろう内容を取り上げる。
3)主題をどう取り扱っているかを明示する。
 (例:…を理論的に考察した。…の意識調査を行なった。)
4)背景は詳しく書かない。
5)常識的な内容は除く。
6)標題の内容を繰り返さない。
②抄録の表現
1)文章として意味の通じる正しい表現とする。
2)一人称代名詞やそれと類似の主語(例:本研究所)は使わない。
3)主観的解釈や批評を加えない。
4)簡潔で明確な表現とする。
5)原則として、原記事で使われている専門用語を使う。
6)略語、略称、略号は、常識的なものを除いて、初出の箇所で説明を加える。
7)図・表は用いず、記述表現とする。
8)図・表・数式番号などは引用しない。数式と化学式は使ってもよい。

数学論文における著者による abstract もほぼこれに準ずる書き方がされてますね。
①3)については The main theorem is... みたいな感じで書かれているのがそれでしょう。
②5)についてはあんまり守られていない気はします。数学論文には定義を abstract には書かないという暗黙の了解がおそらくあって、新規に導入した概念についてはかみ砕いた表現で書かれていることが多いように思います。
②8)は数式は使わない、という暗黙の了解があるような気がします。数式は見た記憶がないです。

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河下希

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当たり前のことを数学的にきちんと定式化することに感動を覚えます。
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